浜松の設計工務店アランです。みなさん、静岡県浜松市天竜区にある「春野町」というエリアについてご存知ですか?『竹の鞄 GENと春野町のお話』ではそんな春野町での家づくりこと、住まい手のこと、春野町という土地のお話をシリーズでお届けしたいと思います。前回の記事はこちら。
築120年の古民家との出会い
春野町への移住を考え始めていたげんさん。春野町川上地区自治会長の富田さんの案内で、町内の空き家を見てまわりました。その中で一番心を惹かれたのが、山の中にある築120年の古民家です。
もともとげんさんが山で暮らしたいと思うようになったのは、鞄作りのため。竹の鞄の製造過程で火を使ったり、竹を乾かしたりする際に、近隣の方に迷惑にならないような広さが必要だったのです。その点この古民家は、隣家までは徒歩で25分。理想的な環境でした。
「家を決めてくる前に、一度アランに相談してね。改修できるかどうか、建築目線で確かめたいから。」と心配していた私たちも、一目見た瞬間にこの家に惹かれてしまいました。この広さ、板雨戸、障子を開けると目の前に広がる杉の森林。この家なら、きっと素敵な暮らしができるにちがいありません。
住む場所が決まり、いよいよ里山の古民家改修工事が始まったのですが、アランにとっても初めての春野町での家づくりは、驚きの連続でした!
お水はどこから引いてくる??
山での暮らしは都会の暮らしだと上下水道が完備されていますが、山の暮らしだとどうなるのでしょう。げんさんの家では、水は沢から引くことになりました。図にするとこんな形です。
「海外のホテルみたいにシャワーの水圧が低かったりするんじゃない?」と思う方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。チームアラン3人続けてシャワーをお借りしたけれど、最後まで水圧ばっちりです!ちなみに、沢から引いた水道管は、定期的に掃除をしなければ沢の泥が溜まってしまいますので時々掃除が必要です。この1点が、町中の暮らしと違うところです。
トイレは進化系ぼっとん便所
トイレは基本的にぼっとん便所なのですが、きれいなトイレにこだわりたい。そこでげんさんと一緒に選んだのは、泡で便器内を洗浄するトイレ。仕組みは汲み取り式なのですが、使用後は水洗便所のように泡で流すので清潔です。使用感はこんな感じ。↓
大事件?!電気がないと暮らせない!!
工事中一番困ったことは「電気」のことでしょうか。げんさんの家には、もともと電線が通っていたのですが、育ってしまった木が邪魔をして電気が届かなくなっていました。電力会社さんいわく、電気を通すためにはこの木を切らなければならないとのこと。
地域の協力を得て、山の持ち主にも話をつけれる状態にし、工事の日を待っていたげんさん(木は山の持ち主のものなので勝手に切ってはいけないのです)。しかし、待てども待てども、電力会社から工事日程の連絡がきません。その間も建築工事は進むのですが、建築用の機械や投光器を使うにも電気が必要です。そのため工事中は発電機を持ち込んで作業をすることになりました。
「もう生活が始まるよ!」という時期になり、いよいよ電力会社に直談判に行くことに!!げんさんが交渉役、中根えみ子がサポート役、中根康晴が資料説明と最後の砦役。必要なこととはいえ、慣れない交渉は少し緊張…。
交渉は長引いたものの、なんとか無事期日までに電気工事を進めてもらえることになりました。工事が進まなかった理由は、結局明確にはなりませんでしたが、「春野町で暮らすために電気を待っている人がいる」という切実な事情が伝わったのだと信じています。
さて、ライフラインが整ったところで次回は「里山の美味しい暮らし」。聞けば絶対食べたくなる、春野町の美味しい食卓をご紹介します。つづく